まるごと保存

先週末のイベント「MELL EXPO 2008」で、ひときわ異彩を放っていた展示がありました。
MELL EXPO 2008
http://www.mellplatz.com/
 
このイベントは、各地のメディアに関する研究や実践の展示が中心でした。そこに唐突に商用製品の展示があったので、周囲からは明らかに浮いていたのです。マスコミから草の根の団体、研究者が展示する中に、ベンチャーが開発したとんでもない商品展示も並んでいる…その状況が私には面白かったです。展示されていたのは、「SPIDER PRO」という商品です。
 
SPIDER PRO
http://www.ptp.co.jp/spiderpro/
 
これは、1週間全チャンネルまるごと保存するHDDレコーダーです。
・サイズが大きい
・リモコンは小さい
インターフェイスは使いやすい(iPod風)
・番組だけでなくCMもデータベース化されている
・CM企業やタレント別検索ができる
・価格は78万円、データベース利用料月額4万円。
 
まるごと保存と、まるごとデータベース化という力技に脱帽です。
さらにアナログ放送オンリーという短い生存期間にもかかわらず商品化できているのは、やはり企業のニーズがあるからでしょう。企業の広報担当者にとって、自社や競合他社のCMなどを一括チェックできるので相当便利だと思います。
 
こちらのレビューで、どんな商品かよくわかります。
http://japan.cnet.com/review/editors/story/0,3800080080,20366369,00.htm
 
というわけで、たしかにすごい機器ですが、ここまで大きいと、ネットワーク上に保存してくれれば済むのに、どうして各端末側でわざわざこんな大きな機械を置いて保存しているのか? とむなしい気持ちにもなります。HDDレコーディングってだけで、放送局は目の敵にしていますからね。彼らに文句を言われないようにするには、自分の部屋で保存せざるをえないということでしょう。
 
番組とCMの内容のデータベースを随時アップデートしているのもすごいです。でも、このデータベース化が一私企業によって先行されてしまったのは、ちょっと残念です。放送の履歴は、研究的にも公共的にも価値があるので、パブリックにアクセスできるデータベースであってほしいからです。
古典的出版物は一応国立国会図書館などが収集、目録化していますが、放送やインターネットについては、アーカイブがあまり進んでいないようです。
放送は、文字通り「送りっ放し」です。もちろん放送局は自社の放送内容を蓄積しているでしょうが、各放送事業者におもねることなく番組放送の履歴を利活用するには、公共的な目的をもった独立した機関が、これらのデータベースを整備する必要があると思います。
放送番組を引用する研究などでは、出典(初回放送日時など)を調べるのに、このようなデータベースの存在は大きいのではないでしょうか。