アートポート中止雑感

名古屋市が名古屋港の倉庫を利用してきた事業「アートポート」が、今年限りで打ち切られるという噂を聞いた。
ふーんと思っていたら、この中止に対する抗議署名をお願いされた。
署名をしたところで、中止決定が覆されることはまずないだろう。
そういう直感があったので、すんなりとは署名できなかった。
ただ、署名依頼文から、市から関係者に中止の経緯が十分に伝えられていないという問題を知り、市当局の対応のまずさはほぼ確信できたので、署名した。

アートポートに携わってきた多くの人々には失礼かもしれないが、外から眺めている限り、この事業は成功していなかったと感じる。
この数年間、アートポートを認知し、訪れ、楽しんだ市民はどれだけいただろうか。
もともとアートポートには、事業の成功を阻む多くの壁が立ちはだかっていた。
第一に、場所の問題。
市街地から遠く、気軽に遊びに行ける場所ではない。
近くには水族館等の観光施設があるものの、その観光客を取り込むことができなかった。
第二に、建物の問題。
倉庫という建物は、それ自体とても魅力的だが、展示や演奏となると難しい場所だ。
また、倉庫内にはトイレがなく、施設機能の不十分さも客の足を遠ざける原因となった。
他にも、おそらく体制や予算の問題もあったと思われる。

しかし名古屋市には、アートポートを単なる失敗とは結論づけないでほしい。
すばらしいイベントも多数開催された。
場所は変わっても、動き出した活動は、なにより継続することが重要だ。
仮になんらかの代替の構想があったとしても、唐突にこれまでの活動を切る必要はない。

倉庫の所有主である港湾当局は、今後は商業施設をつくるらしい。
商業施設にしてみても、ロケーションの悪さは変わらない。
いずれ失敗し消えていくのが目に浮かぶ。