ポッドキャスティング再考

共感ブランディング 顧客の心を巻き込むポッドキャスティング徹底活用術 (講談社BIZ)

共感ブランディング 顧客の心を巻き込むポッドキャスティング徹底活用術 (講談社BIZ)

この本は、帯にある「テクニックを伝授」といった煽り文句とは裏腹に、マーケティング流行語的な「ポッドキャスティング」を真面目にとらえ直している点に好感が持てた。
 
ポッドキャスティングは、「音声」が主体のメディアだ。「音声だけ」と侮るなかれ。人の肉声や息遣いが直に伝わる「音声」ほど魅力的なメディアはない。
 
この本では、企業と顧客の間の新しいコミュニケーションを提案し、ポッドキャスティングを活用した数々の実例を紹介している。それだけでなく、現在の情報社会において「音声」メディアが果たせる役割や特性を丹念に追求している。
 
とくにコミュニティ放送の実践は、コミュニティを活性化している好例で、新しいメディアの可能性を予感させた。
読み進めていくうちに、今日ポッドキャスティングが提供しているコミュニティや一体感は、実は、初期の個人発テキスト中心のWebサイトにあった賑わいの風景に似ているように感じた。しかし、いつしかWebは商業ベースとなり、旧来の新聞・雑誌的なポジションに落ち着いてしまい、「肉声」的な雑味が失われてしまった。
 
だから、ポッドキャスティングの「肉声」は、いまこそ注目されている。
ポッドキャスティングに限らず、新しいコミュニケーションツールを活用するためには、時代に流されずに、それぞれのメディアの特性をじっくりとよく知ることが必要だ。この本を読み終えれば、ポッドキャスティングが持つ可能性がよくわかり、紹介されているケース以外にも、いろいろな活用法を思いつくだろう。本書の読者なら、ポッドキャスティングを、単なる旧来のラジオに落ち着かせたりはしないだろう。
 
世の中のブームや流れに乗ろうとポッドキャスティングに興味を持っている方にはもちろん、ポッドキャスティングなんてもう古いんじゃないのと思っている方にもお勧めしたい一冊だ。