雑誌の休刊

雑誌には寿命があります。
いや正確には、長く続いている雑誌もあるけれど、面白かったり時代を代表するような雑誌は、大抵どこかで死を迎えている気がします。
とくに熱狂的な読者を集めた雑誌は、後に「伝説の雑誌」と呼ばれたりして、無くならなければ良かったのに、と残念な思いにかられますが、死んだからこそ伝説になったとも言えます。
時流に乗った雑誌は、その時の世相を反映しているため、時代が変われば生きづらくなり、リニューアルを画策したり休刊してしまいます。
そう考えると、雑誌の生まれ変わりは、生体の新陳代謝のようなものなので、必ずしも悲しむことではなくて、時代のうねりのバロメーターとして見ることもできます。
 
とはいっても最近は、ネットの台頭による出版不況で、雑誌の世界は相当苦しいみたいです。さいきん、雑誌の休刊を2つ知りました。
 
ひとつは、「広告批評」です。
あと一年、2009年4月号で休刊します。
この休刊は、ほんとうに一つの時代の終焉を象徴している気がします。
80年代には花形だった広告クリエイターも、いまでは憧れの的ではないようです。
巻頭の橋本治のコラムが楽しみで、ここ数年ほぼ毎号読んでいました。
広告を紹介するページは、ある意味、面白い広告のクレジットつきアーカイブになっていて貴重な情報だと思います。こういう情報って、他にどこかがまとめているんでしょうか。研究者のニーズがありそうな気がしますけど。ACCとかが、やってるのかな。
ただ、誌名に「批評」と銘打っているものの、かなり業界寄りに立っていて、ほんとうの批評誌にはなっていませんでした。
いつか「私も広告学校の生徒でした」コーナーに出たかったなあ。(私も生徒でした)
http://www.kokokuhihyo.com/
http://www.kokokuhihyo.com/comment.html
 
ふたつめは、「d long life design」という小さな雑誌です。
ナガオカケンメイさんが、あたらしいコンセプトを背負って、がんばって発行している感じを受けた雑誌でした。
最新号の編集後記に、雑誌の売上低迷を受けて、実感として「しょせんデザインでは売れなかった」と、実に正直に敗北宣言されているのが印象的でした。
コンセプトに新しい風を感じただけに、この休刊は何とも残念ですが、実は私はこの雑誌を実際に買う気にまでは至らなかったんですよね。
内容は面白いなと思いながらも、判型と値段のバランスが悪くて、手が伸びませんでした。まったく、わがままでケチだなと自分でも思います。
http://web.d-department.jp/project/d/index.html
http://web.d-department.jp/project/d/info.html
 
良いと思った雑誌は、応援する意味で買って、コメントを寄せる能動的な読者になるべきだったのかもしれません。でもいま雑誌と、そこまでの近い距離をとろうとする気になれないのは、なぜでしょうか。インタラクティヴィティを感じないからかな。
 
「暮らしの手帖」に、編集部の様子を紹介する記事がありました。昔は読者が直接編集部に訪ねて来ることも珍しくなくて、交流も盛んにあったそうです。今はそのようなことはないけれど、読者との距離を遠くしたくないという気持ちで、その記事は書かれていました。長寿の雑誌も、読者をつなぎとめようとしてがんばっています。いまが正念場なのかもしれません。
 
みなさんは、さいきん雑誌を読んでいますか。
私が読んだ雑誌は、「暮らしの手帖」と「Make: Japan」です。
http://www.kurashi-no-techo.co.jp/
http://jp.makezine.com/